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【閑話休題】中島みゆき「夜会」のこと 第7回

11月21日。
「夜会」2日め。
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みゆきさんの2年ぶりの夜会に立ち会う。

怒っている。鳴いている。
叫んでいる。
みゆきさんは、この荒れすさんだ「時代」を予言していたかのように、

不動明王になり、鬼子母神となり、夜叉となった。
人間の業をさらけだし、108つの煩悩を越えて、
109つの鐘が鳴り響く現代社会、人間世界に警告をならし続けていた。

救いを求める民衆に対して、
自力で生きよと説く。

孤独も、救いも、さびしさも、すべて
自力で立ち向かい、
こうした時代を何度でも、招く人類の業火は、
一人ひとりの心のありようだとせめたてる。

その言葉は、みゆきさん自身にも向けられていた。

リアリズム。どうしようもないリアリズム。
ここには、「誕生」にみられるwellcomeもなく、
「記憶」にみられる「human」もなく、
「二漕の舟」にみられる「partnership」もなく、

ただ、地獄の業火にさらされ、
現実をうけとめよという
御宣託が告げられる

十文字は、私たちの額にひとしく刻まれているのだ。

姉と弟、母と娘、時代を輪廻して
繰り広げられる人間関係の「拘泥」

娘を捨てた母と
わかりあえない姉と弟、
歪みつづけ、ひずみ続ける人の世。

鬼子母神となったみゆきさんが、
西方極楽浄土へと、自力で生きようとするもののみを
救おうとする。

すべてが自業自得、それをかみしめながら、
生きよと、みゆきさんは、

歌う。

中島みゆきは、怒っている。
人間を恐れている。愛のかけらもない。
しかし、それは、自分自身にもむけられている祝詞だ。

懺悔ではすまされぬ、後悔にさいなまれよ。
三途の河もだまって渡らせぬ。

戦争、子捨て、裏切りに、濡れ衣。
それは人間が繰り返してきた業なのだ。

一部のラストで、お堂が焼け、
いよいよ地獄の門が開かれた。

そして後半になり、
みゆきさんをとりまく空気がかわり、
舞台の空気がひずんできた。

これは、もうこれは照明と装置の成果だ。
ラストステージは、悪鬼となったみゆきさんが、
とてつもなく大きくみえはじめる。

私は、空間がひずんだといい、友人は、オーラがみえたという。

アマテラスへ、錯覚なのか、
これは、紅天女なのか?

あっっ、みゆきさんに憑依したものは、
みゆきさんが転生したものは、
はるかに想像をこえていたもの。

生命の起源、生命のオリジンそのもの、
鼻水と、涙があふれ、

身体中に熱い精気が満ちてきた。
その瞬間、中島みゆきは「夜会」を超えた。

愛なんてやさしい飾り言葉ではない、
もっと原生的で、形にならない、豊饒なもの…


…はやくもネット上では、
賛否両論にあふてれいる。

夜会は、演劇だとか、ミュージカルとコンサートの
折衷だとか、いうレベルを、はるかに「越えて」しまった。

「時代」。
中島みゆきと、すごせるこの「時代」は、
私たちが生きているこの「時代」だけだ。

私たちが死に、あたらしい時代の子どもたちが、
たとえ、新しい時代をつくっていくとしても、
中島みゆきは、再び輪廻転生してゆくのだろうか。

たぶん、答えはこうだろう。

人間の業が続く限り、
人間の罪が消えぬ限り、
人間が愛の業火に燃えさかる限り、

中島みゆきは、どんな時代にも
何度でも生まれ変わってくる。

みゆきさんは、中島みゆき、という個体を越えてしまった。
個にして普遍的な存在であり、

肉体であると同時に、魂の存在になった。

私たちは、いま時代の「変わり目」と
時代の「苦しみ」と、
開けるべき、時代の「可能性」について、

ついに目をひらかれたのである。
希望のseedは、確かな心の悼みとともに、自分の胸のなかにある。
中島みゆきは、わたしたちの希望そのものになったのかもしれない。

「同じ時代に生きてくれて、ありがとう」
2007ツアーの言葉が、夜会でもリフレインしている。
ありがとう みゆきさん。

香坂千晶さん、お美しゅうございました(愛)。
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manchi

Author:manchi
メディア、情報文化、マンガ、アニメーションなどの批評・研究などやっております小山昌宏です。著書『情報セキュリティの思想』(勁草書房)『宮崎駿マンガ論』『戦後「日本マンガ」論争史』(現代書館)など。

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